闘病記(10)パレス療法

この夏の暑い間、試合は避けたほうがいいと教授にいわれていました。
そしてステロイドを3日間大量投与することにより、この病気がよくなる可能性があると治療があると説明を受けていた私は思い切ってその治療を受ける決心をしました。

ですが治る可能性は限りなく低いということ、結果が出るのも時間がかかり、来年頃結果がでるということも聞きました。
来年の3月になっても血液検査の結果が変わらなければ効かなかったことになるということでした。
骨髄移植なんかせずに治せるのなら治したいと思っていましたのでこのパレス療法をする価値はある!と考えたのです。
それも入院は3日間だけと聞いていましたから・・・

この夏は身体が思うように動かず、あまり練習はできませんでした。
明日、入院という前日にゴルフ場の男子研修生のみんなが「中溝さん、海にでも行きましょうー、元気出して下さいよー」ということで、お昼から御宿の海水浴場に連れて行ってくれたのです。
琵琶湖には小さい頃よく来た覚えはあるのですが、海は・・・・人生生きてて海にこうやってきた記憶がありません。
パラソルが立っていて、海の家というのがあり、カキ氷や焼そばが売っていました。
海水に足をつけることはしなかったのですが、ただキラキラしている海を眺めているだけでなぜか心が穏やかになりました。

そして次の日、平成7年8月8日東京女子医大に入院です。
入院の際ベッドの上で担当の看護婦さんに「悔しい・・」という気持ちを泣きながら伝えました。
私の話を真剣に聞いてくれた看護婦さんの目も少し潤んでいました。
治療は点滴だけの3日間。入院生活はとてもつまらなかったのを覚えています。
テレビを見る事もなくただじっとベッドの上にいてるだけ・・・
ステロイドの副作用で食欲が旺盛になると聞いていましたが、元からある方なのでそれはあまり感じませんでした。 食事はもちろん大盛りを頼んでしっかり食べていましたが、副作用の血糖値がすごく高くなるようなこともなく3日間のステロイド点滴は終了しました。

退院の日、再び輸血をしました。
そして退院の際、気づいたことがありました。
たった3日間歩かなかっただけで足の筋肉の衰えを感じたのです。
ギョッ!と思うくらい歩くのに違和感がありました。
特にふくらはぎが細くなったかんじで・・・
それから3ヶ月、半年と時間が経ちましたが、残念ながら結果は出ませんでした。

ぶっちゃけ、、、この入院は家族に内緒にしていました。
というより、「伊豆に3日間合宿に行くから家にいないから」
と事前に嘘の電話を入れておいたのです・・・・が!!
「あんた何やってんの!スポーツ新聞に「中溝入院!」の記事が載っていたわーー!」と母からのTEL・・・

しっかりバレていました。
すごい剣幕でした。「なんでいうてくれへんのや」と母は泣いていました。
ただ3日間だし、たいした事ないから別に言うこともないだろう、いらぬ心配をかけたくなかったから・・・ほんとにいらない心配をかけたくなかっただけなんです。
しかし、私のこの言わない性格は移植前まで変わりませんでした。